地車(だんじり)を用いた祭の総称である「だんじり祭り」。その中で、大阪府和泉市信太地区 「葛の葉町」の御祭禮幟を製作させて頂きました。葛の葉町は白狐の伝説が伝わる町ということでも知られています。
各町内の歴史とこだわりが詰まった地車(だんじり)。その地車の装飾品の一つである御祭禮幟もまた、各町内のこだわりが凝縮された一品です。加藤健旗店にて製作させて頂いた葛の葉町の御祭禮幟。白狐の伝説を具現化した幟旗とは一体どのようなものでしょうか。
1.白狐の伝説が伝わる町内「葛の葉町」
信太の森で狩人に追われた白狐を男性が助けるが、その際に男性は怪我をしてしまう。そこに葛の葉という女性が現れて男性を介抱し、やがて二人は恋仲となり結婚して童子丸という子をもうける。しかし、童子丸が5歳の時に葛の葉の正体が男性が助けた白狐であることが知れてしまう。葛の葉は、全ては稲荷大明神の仰せであることを告白し、信太の森へ帰ってゆく。葛の葉の子の童子丸は後の安倍晴明のことだと伝えられています。
この伝説の舞台となった場所が葛の葉町となり、伝説に因んで、明らかに異彩を放つ白銀の御祭禮幟が生まれました。
2.町紋が織り込まれた生地
光沢を持った白色の生地、その表面には決して主張はしないものの確実に存在感を放つ町紋が浮かび上がっています。刺繍とはまた違う、紋を地模様に織り込んだ西陣織の正絹一丁固地織という技法を用いています。西陣織は京都西陣において製織された絹織物の総称であり、染色した糸を使って模様を織り出すことを最大の特徴としております。その西陣織を幟旗の生地に使用することで、地車に相応しい高級感がある一品となっております。
3.白生地に白銀の刺繍で唯一無二の御祭禮幟へ
白狐の伝説を形にする上での最大のポイントは、白い生地に対して刺繍も白を使用する必要があるため、どのように刺繍を施せば「御祭禮」の文字がはっきりと見えるかという点です。
そこで、刺繍は銀糸を使った盛上刺繍で、文字を立体的に形成。職人による総手刺繍で光沢感があります。更に縁を金糸にすることで立体感のある文字を際立たせ、白生地の上でもはっきりと見えるように仕立てております。
4.縁に使用する生地へのこだわり
幟旗の縁とチチ(棒を通す部分)の生地は、中央部を引き立たせるとともに全体との調和とイメージを具現化するために特別な生地を選定。銀糸主体の葡萄唐草(ぶどうからくさ)の金蘭を使用しました。
このように葛の葉町の方々のこだわりで完成した御祭禮幟。この御祭禮幟を携えて地車が疾走する姿はまさに白狐の伝説を彷彿とさせます。
当店で法被も製作させて頂きましたが地車や幟旗とのバランスが取られていますので、そちらもご覧になって頂ければ幸いです。