自分だけのオーダーメイドのものが出来た時の喜び、この充実感は何物にも代えがたいものがあります。
それが期待を上回る出来映えだったとすると、物の価値以上に人生において大きな意味があるのではないでしょうか。
加藤健旗店では、お客様の期待を上回って感動して頂ける瞬間のために何が出来るかを常に考えています。
今回は、そんな思いで製作した江戸半纏を通して、どのように期待を上回るオーダーメイドの半纏·法被を製作しているのかを紹介させて頂きます。
1.お客様の「こんなんにしたい」が原点
オーダーメイドの半纏·法被は、既製品にはない独自のご要望を形に出来るものです。その原点は、お客様の「こんなんにしたい」を聞くことです。
そのヒアリングの際には知識と経験が無ければポイントをおさえることは出来ません。
我々の仕事はプロの視点で、必要な情報を丁寧にお聞きすることから始まります。
だからこそお客様には、初めてでわからないことばかりであっても、純粋にやりたいことを言って頂きたいと考えています。
2.潜在ニーズに応える
今回のご要望は、襟の文字と背中に「嘉」という文字と、お客様の苗字を粋な字体で表現するというものでした。「嘉」という文字には、良い、めでたい、立派な、幸いする、といった意味があるとのことです。
そのご要望を実現するために襟の文字と背中の「嘉」を江戸文字にすることを提案させて頂きました。
実は、この江戸文字を本当に書ける人は今はほとんどいません。しかし、それを実現出来ることで、他とは違う本物の格好良さに近付くことが出来ます。
また、腰柄には「花谷」の文字を角字で表現。角字を少し崩して読み易い形にアレンジすることも可能ですが、出来上がりのバランスを考慮して敢えて本式にこだわりました。
さらに、生地は独特の畝を持つ綿スラブの生成り色で、表面の独特の凸凹がある質感や染め抜いた文字の生成り色が和の雰囲気と高級感を持たせます。
染色は「黒に近い紺色」というご要望を頂き、昔ながらの本染めである引き染めで染め上げました。転写などでは出せない色の深みがあり、しっかりと色が裏通りして味わいのある仕上がりになっています。また、反応染料による引き染めは洗濯に強く何度も洗濯してご使用頂けます。
さらに、背中には生地を縫い合わせる背縫いを入れています。これは広巾の生地がない時代に二つの生地を縫い合わせて必要な大きさにしていたことがルーツであり、現在は背縫いをせずとも必要なサイズの生地はありますが、敢えて和の雰囲気を出すために、技術を必要とする背縫いを施しています。
お客様が本当に望まれているものが何かを考えてこのようなデザインや製作方法を提案させて頂くことで、知っていなければ気付かない潜在ニーズに応えることが出来ます。
3.デザインは納得いくまで
オーダーメイドのものを作るなら納得して頂くまでデザインは詰めなければなりません。お客様には決して遠慮せずにご要望を伝えて頂きたいと思います。
そのため、デザイン校正による追加料金などは発生しないことをお伝えし、製作に入る前に必ず図案を確認頂きます。
4.美しさを決める技術力
良いデザインがあっても、きれいで丈夫に仕上がらなければ台無しになります。本当に満足のいく出来映えにするためには当然技術力が必要です。染色や縫製の職人にもそれぞれ得意分野があり、選定したデザインや製作方法において最も腕のいい職人をコーディネートしなければなりません。
こうして、喜んで頂きたいという思いで製作した江戸半纏をお渡しした際に、お客様から想像以上の出来だと言って大変喜んで頂くことが出来ました。
これからもオーダーメイドの仕事に対する哲学を強く持ち、期待以上、価格以上の製品を製作してまいります。