最近海外からも当店へ暖簾の製作依頼を頂くことが増えてきました。当店に足を運んでくださる海外のお客様は、本来暖簾が持っている独特の風合いを強く求めていらっしゃると感じており、期待されている「日本的な」雰囲気を持ったもの作りを意識して製作させて頂いています。例えば...
台湾からお越し頂いた、日本の宇治茶の販売店やカフェを台湾で数店舗経営されているお客様から暖簾の製作をご依頼頂きました。
最初は宇治茶のお店の店舗暖簾のご依頼でした。生地としては麻をご希望頂きましたが、麻にも種類が有り、お求めの雰囲気に合った生地を選定する必要があります。数種類の麻の生地を紹介させて頂き、最終的に提案させて頂いたのが瓦布(かわらふ)という生地になります。
瓦布とは文化財修復にも使われる生地です。
どういうことかというと、お寺の本堂の屋根などは、瓦を敷く前に土を敷き、その上に瓦を敷きますが、木の上では土が滑るため、滑り止めとして布を敷きます。その布が瓦布という麻の布であり、目の粗い麻が土が滑るのを止める役割を果たします。この目の粗い麻を暖簾の生地に使用することで独特の雰囲気を持たすことができます。
この生地に当店で職人がご要望の雰囲気に合わせて文字を書き、本染めで染色することで元来の暖簾の雰囲気を持った仕上がりにしております。
店舗暖簾は、色や生地を変えることで店の雰囲気を変えることが出来ます。季節によって変えることで、温かみや涼しさを表現するのに使われることもあります。今回は麻の暖簾とともに、より宇治茶をイメージし、かつ清涼感のある暖簾もご依頼頂きました。色見本を何度も見比べて協議させて頂き、繊細な色味を表現しています。
最後に珈琲店の暖簾をご依頼頂き、コクのある濃厚なイメージで、麻の太布に茶色の文字で表現しました。茶色の文字が生地と同化することが懸念点ではありますが、経験上、同化しない色味を選定して提案させて頂き、製作させて頂きました。
仕上がりを見て頂いた時に「本当に綺麗な作品だ」と言って喜んで頂けたことを嬉しく思います。今後も元来の雰囲気を持った暖簾というものを大切にしていくと同時に、新しいデザインを取り入れて、より洗練したものを製作してまいります。